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テレビゲームの専門調査会社メディアクリエイトの代表、細川 敦によるコラム(新連載第二回)

細川 敦の居待月

今、ゲームビジネスに起きていること.2

 

まずは前回のおさらいをしておきたい。ゲームビジネスにおけるクロスプラットフォーム、デバイスフリーとはゲームハードとソフト(ゲームオンデマンド・クラウドゲーミングによって)がユニバーサル性を持つことであり、ハードとソフトの開発(製造)等の生産性が向上したことで実現した。両者の生産性の高さが一致したのはゲームビジネスが始まって以来、初のことである。 両者の高い生産性が自由度の高いビジネスモデルを可能にした。その代表例がフリーミアムであり、それによって新たな市場が生まれ急成長した。

ゲーム専用機では、ハードのスペック向上のビジネス上のマイナスを、数年に一度のモデルチェンジ、ユニバーサル性がもたらした高い生産性によって吸収してきた。一方、ソフトは労働集約型から脱却できず、開発生産性の向上がないままに価格低下に引きずられ収益性の低下を招いた。

北米のゲーム会社は、大きな市場と開発の徹底した標準化、分業化を押し進め、資本集約型、知識集約型への転換を図っていた。あるゲーム会社の開発トップがこうした彼我の差を、「ゼロ戦とグラマン」とかつての戦闘機の開発思想、生産体制になぞらえた。ツボを押さえた比喩だと思う。

日本でも、ソーシャルゲームはその生成がハードとソフトが共に生産性が向上したタイミングと一致したために、また家庭用ゲームからの呪縛もなく、当初から知識集約型の開発体制を構築することができ、それがオープン化によって一気に加速したといえよう。



いろいろな汎用デバイスが安価に豊富に出回り、それにクラウドゲーミングが被さることで、ユニバーサル性というゲーム専用機の強みを奪いつつある。ゲーム専用機は、新たに出現した広いユニバーサルマシンの一つに組み込まれるか、むしろ自らが積極的にオープン化することで主導権を握っていくか、独自の「系(島宇宙)」の中で存在意義を発揮するかの選択を迫られることになる。

最近、SCEが米国のクラウドゲームサービス会社のGaikai社を買収するとのニュースがあった。Gaikai社はスマートテレビでのゲーム提供に向けて、SAMSUNGやLGと提携交渉をしていたとのことだから、SCEが割って入ったのか、そもそも本命だったかはわからないが、いよいよSCEが動いたという印象を内外に与えた。

Gaikai社のサービスはゲームのストリーミングであるから、データを保存するための媒体を必要としない。ビジネスモデルの自由度がさらに増すことは間違いない。なにより、SCEが自社が主導する形でゲームのユニバーサル化に対応していくという明確な意思表示がなされたということになる。

2010年2月に、SCEがゲーム機を選ばない汎用コントローラー、「Universal Game Console Controller」の特許を北米で出願したという報道があった。それらよると、タッチスクリーンに表示された擬似的なボタンに触れることで操作するという。手の感触や感覚という課題はあると思うが、デバイスフリーの一環として注目される。

Wiiリモコン、PS Move、Kinectはまさに直感操作が可能なユニバーサル入力機なのだが、掌でグリップを握る類の‘コントローラー’ではない。よりゲームを楽しむには、心地よい掌の握りあんばいも含めて、‘コントローラー’がうってつけであることは言を待たないだろう。



ゲーム専用機にあってコントローラーは本体と不可分のものだったが、ハードのユニバーサル化においては、コントローラーは周辺機器(ペリフェラル)と同様の扱いになっていくと思われる。無くても遊べるがあることでもっとおもしろく没入できる。ソフトと連動し、無くては遊べない。この2通りとなる。

筆者は、PS4のコントローラーは従来タイプと、このタッチスクリーンのみのタイプの2種類が用意されるのではと思っている。もしくは、従来タイプにタッチパネルが付くことで他機種にも使える‘ハイブリッド型’だと思っている。有償のソフト次第で汎用コントローラーになるのだ。UP TO DATEで最新のハードにも対応する。車載ナビを端末兼モニターにし、この汎用コントローラーで自宅と自動車の中でシームレスにゲームができるかもしれない。もちろんタブレットにも対応する。こんな想像が膨らんでくる。

今年のE3で発表されたWonderbookにしても、ちょっと毛色は違うがnasneにしても、SCEは広義の周辺機器に力を入れているようだ。ハードやソフトを含めたサービスに付加価値を与え、差別化し、収益も見込めるものだ。今後、ハードとソフトがユニバーサルなものになっていく中で、周辺機器類の重要性が高まることは間違いない。

ひょっとすると、より高いゲーム性や操作性を楽しむには、ゲーム専用機ではなく汎用機に周辺機器があればいいということになることも十分に考えられる。つまり、ゲーム専用機そのものが周辺機器化していくということだ。

そもそも、テレビという汎用機にひとつの周辺機器としてゲーム専用機があったと考えるならば、この方向性は格別驚くことでも嘆くことでもない。スマホも同じことだ。USBで周辺機器がつながるのだから、いろいろなことが考えられよう。現実味に乏しいが任天堂の戦略次第では、スマホ用のDSアタッチメントなどもあるかもしれない。

ともあれ、周辺機器化がゲーム専用機の生き残り策であると同時に、可能性の一つであることは確かなことだと思っている。ユニバーサルに対抗するでもなく、飲み込まれるでもなく、ユニバーサルに相乗りする。結局、そういうことではあるまいか。
(続く)