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テレビゲームの専門調査会社メディアクリエイトの代表、細川 敦によるコラム(新連載第一回・加筆修正版)

細川 敦の居待月

今、ゲームビジネスに起きていること.1

本コラムを再開しようと思う。まずは、ゲームビジネスおよび、それを取り巻く環境について、多少なりとも整理することから始めたい。いずれも、筆者の見解であることをお断りしておきたい。共感を得られる部分もあるだろうし、首をかしげることもあると思う。コラムということでご容赦いただきたい。  今、ゲームビジネスに起きていることと題し、さほど論旨や構成にこだわることなく、何回かに分けて思うままに書き連ねてみたい。このあたりも、ぜひ、ご承知いただきたい。第一回は、クロスプラットフォームについて。

最近のゲームビジネスのキーワードは「デバイスフリー」と「クロスプラットフォーム」である。同一のコンテンツやサービスが機器の壁を越えて行き交うことが前者、プラットフォーム間を流通する様が後者である。概ね、後者は複数の機器類で構成されることが多く、その意味で両者は似た概念を持っている。クロスプラットフォームとは、自社のそれを他社に開放することでもあるから、これはプラットフォームのオープン化ということもできる。

ソーシャルゲームが大きく伸張したきっかけは、2010年のオープン化であることはよく知られている。これは、モバゲーやGREEがサードパーティ製ゲームを自社プラットフォームに受け入れたことを指しており、これによって多彩なゲームが生まれ、運営ノウハウがサードパーティにもたらされた。必ずしも一方通行ではなくサードパーティのノウハウも相互に共有された。

ソーシャルゲームはいわゆるフリーミアムモデルであり、アイテム課金に向けた刺激づくり(これも、昨今のキーワードでいうなら射幸心)というノウハウがオープン化によって、広く行き渡ることになった。本来ならば、試行錯誤で得られる微妙なノウハウをサードパーティが短期間に獲得したことで、瞬く間に市場が急拡大し、それが社会との軋轢を生んだことも、既にご承知のことと思う。

提供されるノウハウにはレベルがあり、それは運営者とサードパーティ(SAP)とのパートナーシップの強弱の程度によって異なる。つまり、オープン化は運営ノウハウの共有を軸に擬似的な系列化ともいうべきグループ化を生んでいく。オープン化は、名のとおり開放されることで等しくチャンスが到来したことでもあるが、一方では系列化によって閉じたものとなってしまった。

特に、小規模なSAPや大手のゲームパブリッシャーであっても強力なIPを持たず、プラットフォーマーへの依存度が高い事業者はその系列に飲み込まれてしまった。結果、ソーシャルゲームはプラットフォーマーとSAPの関係が固定化され、オープン前の溌剌さを欠いてしまっている。

系列化を済ませたプラットフォーマーは、ひとつの秩序の支配者となるが、どこかで勢力均衡が生じ、秩序の担い手は他社か新規参入者に取って代わる。 これは、家庭用ゲームビジネスの世界で起きたことであり、ソーシャルゲームも現時点まではその経過を辿っているといっていい。

オープン化で成長しつつも一方で構造が固着し、次の新規参入を許してしまうのだ。必ずしも、オープン故に参入障壁が下がり競争圧力が高まった結果、既存勢力が新規参入者に駆逐されるのではない。硬直化こそが新規参入の余地を生むのだ。



家庭用ゲーム機を主語にクロスプラットフォームを見るなら、それはあるゲームタイトルにおいて他社の他機種との組み合わせを容認することである。緩く解釈するなら、自社の他機種との適合も成立するが、これをクロスプラットフォームというかは微妙である。

なぜ、他社の他機種との組み合わせの必要性が生じたのか。それは、スマートフォンの登場によって、ハードスペックが向上しゲーム機との性能差がなくなり、集約化が進んでユニバーサル化が実現したからである。その結果、ハードのコストが一段と低下し普及速度が計算できるようになり、事業展開のリスクが減少した。

ハードの生産性向上を追いかけるように、クラウド化によってソフト開発と運用の生産性が向上した。クラウド化によって、カスタム開発にかかっていた時間やコストが短縮され、初期投資額も低廉で済むようになる。すなわち、生産性の向上ということになる。クラウド化とはソフトのユニバーサル化である。 ハードの生産性向上と相まって多彩なビジネスモデルの構築が可能となり、これが新サービスの市場投入を底支えするのである。

これまで、ハードウェアとソフトウェアが軌を一にして生産性が向上したことはなかった。どちらか一方が進みアンバランスの状態が続き、それ故に革新的な商品やサービスが生まれ難かった(収益面で事業化が難しかった)。今は、両者の低廉さが重なった幸運な時期であり、多彩なサービスを生む土壌形成の一歩手前の時期なのである。各事業者はこれを格好のビジネスチャンスと捉えているのだ。

今ひとつの理由は、クラウドによるシームレス化によって、外出先とリビングルームで連続してコンテンツやサービスを楽しむことができるようになることだ。それによって、リビングでのファミリー消費と個の消費が結合する。またこれから普及するスマートテレビとの親和性も高く、このデバイス兼モニターを巡る椅子取りゲームにいち早く参加したいからである。

デバイスもモニターもユニバーサルなものとなりつつある中、自社のデバイスにこだわることは意味が無くなってしまった。ソフトとハードの生産性が共に高くなり、多彩なビジネスの芽がでてきた。つまり、ハードとソフトのユニバーサル化こそが、クロスプラットフォームの背景であり、むしろ本質であり、中身である。

ゲーム専用機の優位性は、唯一のユニバーサルマシンであることだった。今、それが崩れている。プラットフォームをテーマに、しばらく続けてみたい。
2に続く