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テレビゲームの専門調査会社メディアクリエイトの代表、細川 敦によるコラム(第五回)

細川 敦の居待月

ドイツ、ケルンの“あつい”夏

8月17日からドイツのケルンで開かれた‘gamescom2011’ の視察に行ってきたので、この印象について述べてみたい。

当イベントはユーザー向けで、北米のE3、東京ゲームショウと並ぶ大きなものだ。開催地はドイツであるが、ヨーロッパ各国から広くユーザーが集まる。一方、アジア人はほとんど見かけることがなく、ヨーロッパのゲーマーの為の祭典という性格を持っている。

今年で3回目となり、昨年は25万人の入場者だったが、認知が進んだのか今年は275,000人が訪れ(主催者発表)、10%の増加となった。

事実、10時のオープンと同時にゲームファンが我先にと駆け出し、お目当てのブースに殺到する。その多さと勢いは、初日とはいえ規模を感じさせるに十分なものだし、改めて、ゲーマーの祭典であるとの認識を強くする。コスプレ組もそこそこに見かける。

ユーザーイベントではあるが、ビジネスブースでは、各ソフトメーカーがオフィスを構え、商談の場ともなっている。こちらはノーネクタイだが、ダークスーツ系が目につく。gamescomはE3のような場外での大きなカンファレンスこそ行われないが、ユーザー向けとビジネスが両立したビッグイベントであるといえよう。

さて、走り出した先陣の集団がどこに向かったのか。やはりヨーロッパでもFPSが盛んなようで、「Battlefield 3」「Call of Duty: Modern Warfare 3」が早くから長蛇の列をつくっていた。

PS VitaはSCE全体の区域の中に専用ブースを設け、一人一人にかなりの時間を割いて試遊の機会を提供していた。筆者が訪れたビジネスデイや一般日初日(平日)では、約30〜40分待ちという状況だった。人が途切れることはなかったが、先のFPSの盛況ぶりと比べ、またE3と比較しても、その淡々さを感じてしまう。

もちろん、わざわざ平日に宿泊してまで駆けつけるというコアなゲームユーザーが大半ということもあり、これをもってヨーロッパ全体の傾向ということはできないが、彼の地ではPS3などの据置型が大きな比重を持っているとの印象を受ける。

FPSの次に目立ったのは、といってもだいぶ差があるのだが、ダンスゲームである。こちらは、FPSが大きなブースを構えた特定のタイトルに集中したのに対し、あちらこちらで小規模のデモなり体験の場が散在している。前者が新作の発売を控えているということもあるのだろう。半面、ダンスゲームの底堅さを感じる。

ダンスゲームは、Wiiリモコン、PS MoveやXbox360 Kinectに関連づけた展開が為されている。筆者が見た限りでは、PS Moveが最も多く、北米と比較してKinectはその存在感が薄かったと思われる。

これはXbox360全体にいえることだ。ケルン市街のゲーム販売店の売場や品揃えを見ても、そうした傾向を感じる。専門店GameSpotでは2階に売場があり、指名買いや目的買いのユーザーが多いことを伺わせる。つまりコアなゲームファン向けなのだが、その割りにはgamescomで目立っていなかった。

さらにPSPの売場は北米よりも小さく、GameSpotでは見当たらなかったほどだ。むしろ、家電量販店のほうが、売り場面積が広いこともあってか売場がまだしっかりとしている。客層の違いもあるのだろうが、日本では想像できない苦戦だ。

立体視の3Dゲームはどうだろう。これは、無くはないのだが、チラホラかそれ以下の存在だ。少なくともヨーロッパでは、立体視を使ったゲームは、ほとんど顧みられていない。会場での閑散ぶりだけが際だった。

最後に、任天堂のブースについて。3DSとWiiを展開しているのだが、3DSのほうに中心が置かれている。とはいえFPSコーナーの賑わいに及ばない。目立ったのは、マリオを始めとするコスプレイヤーが多かったことだ。ゲームファンというよりも、任天堂ファンが集まっている。そのためか、試遊よりも壇上でのユーザー参加のイベントに力点が置かれている。ギャラリーも多い。

平日のせいもあってか、家族連れが少なかった。gamescomの性格や会場の立地からみて、また8月は家族でバカンスを楽しむという習慣もあり、たとえ土日であっても、家族連れが足を運ぶようなイベントではないと思われる。やはり、コアゲームファン向けの祭典なのだ。

gamescom全体を見て感じたことは、日本のソフトメーカーの存在感の薄さだ。これは北米以上かもしれない。ミーティングで聞いたことだが、リーマンショック以来、ヨーロッパ各国のゲーム需要は停滞気味。ギリシアの債務危機も影を落としている。打開策のひとつとして、中東と南アフリカ市場に目が向いているとのことだ。

そうした状況でも、多くのゲームファンを集めるその動員力にはすごいものがある。その熱さを十分に感じた視察だった。