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テレビゲームの専門調査会社メディアクリエイトの代表、細川 敦によるコラム(第四回)

細川 敦の居待月

3DS、捨て身の15,000円

3DSが15,000円、従来から10,000円という大きな値下げを行った。いずれ価格改定に踏み切るものと思っていたが、その下げ幅の大きさと唐突さに、正直驚いている。筆者の関係先からも、戸惑いの声が聞こえてくる。もちろん、値下げはウェルカムなのだが、その戸惑いは余りに任天堂らしくないということと、値下げ効果に対しての微妙な温度差から生じているようだ。これについて、筆者の見解を披露したい。

発売後半年で大幅な値下げは、誰が見ても異常事態だ。これを迷走と見るか、なりふり構わなさと見るかは、意見が分かれるところだ。3DSの現状から、もっとも避けるべきことは「段階的値下げ」による効果の半減である。よく言われる「戦力の逐次投入」の愚を犯さないことに尽きる。

既存DSとの価格逆転現象も、思い切った価格でユーザーの3DSへの移行を強力に後押しする、むしろ引っ張ることを意図しており、その意味で、併売しつつ徐々にというソフトランディングを放棄し、強引に買い換え需要を喚起する強攻策に打って出たと見ることができよう。

唐突感はあるものの、いやむしろその分だけ、なりふりを構っていられないという事情と、打開への強い意欲がうかがえる。何より、任天堂が今後中期間のゲームビジネスにおいて、負け組になってしまうのではというイメージを払拭するためにも、打てる手を間断なく賭けていかなくてはならない。

今回の値下げには、この賭けの要素がつきまとう。それが、追いつめられた任天堂と重なってしまう。誰しも事業に賭けを持ち込みたいとは思わない。しかし、それをせざるを得ないときもある。任天堂も、ファミコンの発売に際して、またそれ以降、何度かそうした局面に遭遇してきた。現状を打ち破るには、賭けが必要なのだ。賭けの失敗を恐れて緩手を積み重ねてもしかたがない。大幅値下げに賭けた任天堂は、今、為すべきことを為したのだ。

さて値下げ効果はどうだろう。国内でどれほどの台数を売ることができれば、賭けに勝ったと言えるだろうか。15,000円になったという事実を知らない層、または無関心な層は対象外として、今回、それに直接的に響く層は500万人と想定する。2012年3月までに、そのうちの350万人を新たに獲得することだ。値頃感ある価格と遊びたいソフト。このふたつが満たされたときに、3DSを買うというユーザーは少なくない。かといって、この数の達成は容易ではない。

値下げばかりに目が行きがちだが、これだけで問題や課題が解決するわけではない。むしろ市場は、それにどう対応するかを注目している。ユーザーも、任天堂ならではの遊びの提案を期待している。これらは決して賭けではない。 この点での任天堂らしさがきちんと示されて初めて、今回の値下げが「決断」と評価されるのである。