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テレビゲームの専門調査会社メディアクリエイトの代表、細川 敦によるコラム(第三回)

細川 敦の居待月

PS Vita 、Wii Uを見た、触った。
-2011年E3で感じたこと(後編・PS Vita)-

2011年、E3を見てきた、自身としては数年ぶりのE3だ。筆者なりの印象をレポートしてみたい。特に、PlayStation Vita とWii Uという新型機についてカンファレンスや会場で感じたことを報告しよう。前回のWii Uに引き続き、今回はPS Vitaを取り上げる。

前編のWii Uに続き、今回の後編ではPS Vitaを取り上げる。本年1月に行われた日本での発表とのもっとも大きな違いは、力点の置きどころにあったように思う。

日本では、PSPについて寄せられたであろう不満点や、実装を希望するユーザーの声を反映させたPSP後継機をアピールし、さらに、ソーシャルユーザーにも目を配った位置情報に基づくコミュニケーション機能についてもしっかりと押さえていた。それをゲーム機としてシンプルに言い切った。

一方、E3ではPSPを引きずらず、リセットして新たに大人向けの携帯ゲーム機をリリースするというスタンスであった。「Uncharted」等の実演では、従来のアナログスティックに加え、マルチタップ、ジャイロセンサー、背面タッチパネルを駆使し、どうだ!と言わんばかりのものだった。

3DSとの比較においては、3DSが立体視や通信機能でゲームの奥深さを主張したのに対し、PS Vitaでは携帯機ならではのゲームの拡がりや幅を強調しているように感じた。また、3DSのプロダクトアウト的なアイデア勝負に対し、市場性のマーケットインという発想だ。さらに、立体視という出力系に振った3DS、むしろ新旧織り交ぜて入力系に力を入れたPS Vitaという点でも両者の違いがある。

これは、携帯機としてグラフィックスがほぼ十分な解像度にあることに加え、汎用チップを採用したことで、いずれ画像においてはスマートフォンへの優位性が失われると見て、ゲーム機としての魅力を入力系で打ち出したということでもあるだろう。

こうしてみると、PS Vita初代機のライフサイクルは短めかもしれず、その分、急速に市場を立ち上げなくてはならない(北米では新市場の創出でもある)。それだけのスピード感が求められる。Wi-Fiモデルが 24,980円(税込)、3G/Wi-Fiモデルが 29,980円(税込)という価格は、ハード単体の収支と普及に向けた値頃感に、折り合いをつけた設定といえる。

早めに勝負をつける、そうした意気込みが感じられた。「北米でも売れないと…、日本だけでのビジネスは難しい」という、若干腰が引き気味のパブリッシャーを納得させる上でも、早期決戦と一定の成果が必要だ。小さな成功では満足しない。まして、3DSにもたつき感があるだけになおさらだ。SCEは意欲的でチャレンジングな販売を見込んでいるに違いない。

PS Vitaの発売は今年のホリデーシーズンと発表された。北米のそれは11月第4木曜日の感謝祭(Thanksgiving Day)からスタートする。日本でも同時期、もしくは12月のボーナス支給日前あたりになるだろう。お約束となった感がある12月3日の土曜日かもしれない。

気になるのは、Wi-Fiモデルと3G/Wi-Fiモデルが同時なのか、多少の時間差をおくのかということ、そして両機の割合だろう。側聞するところによると、iPad2のそれは発売後3週間の時点で74:26とのことだ。3G/Wi-Fiモデルについて、日本の通信キャリアがどこになるか、また通信料等のランニングコストが不明であり、それ次第ということもあるだろう。筆者としては、ほぼiPad2に近いものになるものと想像している。

引き続き販売される現PSPとの兼ね合いも気にかかる。多少、落ちついてきたとはいえ、依然前年比を上回る勢いのあるPSPがどういうペースで売れるのだろう。PSP購入者の年齢層が低下しており、当社の調査によると小学生の購入意欲が高い。

広義のキッズ層の獲得は重要だ。彼らの両親はゲーム世代であり、また子供を自宅や友人宅で遊ばせるという志向が強い。昨今の社会事情から、無用な事件や事故に巻き込まれないようにという配慮が働いているからだ。これも、当社の調査で明らかになっている。

親は結構の本数を子供に買い与え、彼らのゲームへ費やす時間は多い。その意味で、キッズはヘビーユーザーとなっているのだ。今後の成長に応じて、ゲームを買ってくれるという安定も期待できる。今後、キッズ市場を制するハードがゲーム市場を制する、といっても過言ではない。マイクロソフト社も、Kinect対応のディズニーやセサミストリートのソフトを揃え、キッズ層への浸透を明確に表明している。

当面、家庭用ゲームの中心層は、キッズ層と20代になっていくだろう。前者をPSPが、後者をPS Vitaが担っていく。そこにWii Uと3DSや現行据置機を交えた展開となる。スマートフォンやソーシャルゲームは別として、ユーザーにとって家庭用ゲーム機の選択肢はこれまでになく拡がるだろう。