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テレビゲームの専門調査会社メディアクリエイトの代表、細川 敦によるコラム(第一回)

細川 敦の居待月

ポテンシャルと究極

東日本大震災後の消費の落ち込みが激しい。夜の街は人気が少なく文字通り灯が消えている。筆者の身近なところでも、行きつけの店が早仕舞いをしたり、予約があって初めて営業という状況が目につく。レジャーもしばらくは安・近・短の傾向が続くだろう。娯楽は、外出を控えることから、室内での遊びが増えているようだ。

その意味で、映画やゲームは底堅いように思われる。事実、3月は中古ソフトが前年の二桁増となっている。さらに、携帯ゲーム機のバッテリーも売れ行きが良好だ。手軽で比較的安価な中古ソフトを、停電中であっても楽しむということだろう。手放しで喜ぶわけにはいかず複雑な心境ではあるが、それでも多くのユーザーがゲームに触れてくれることはありがたいことだ。仮に「しかたがない、中古ゲームでも遊ぶか」であったにしても…。

2010年暦年、2010年度(4〜3月)いずれも、テレビゲームの市場規模は2年連続で前年を下回った。特に、ライフサイクルが末期となったハードの落ち込みが大きかったものの、ソフト自体は微減というほどではないが、まあ軟調のレベルにとどまるものだ。過去の推移を見ても、ハードは普及期というヤマと、それ以外の時期での差があり凸凹がはっきりしているが、ソフトは概ね安定している。

新品の売れ行きだけでなく、中古のそれを加えたプレイ人口換算となるとほぼ平坦であり、結構安定している。その意味で堅調であり、良く解釈するとポテンシャルがあるということになる。もちろん、これだけではメシが食えないので、それをどう現実の消費に向けるかが問題であり、それこそが産業に従事する者にとっての仕事となる。

先般の任天堂の決算説明会では、同社の岩田社長は「ポテンシャル」という単語を良く用いた。筆者はこうした場では、どんな単語がキーワード的に使われているか、その頻出度合いを気にする。因みに、先般のSCEのNGPの発表会で平井一夫現ソニー副社長が多く口にしたものは「究極」だった。

岩田社長は、新発売の3DSが期待通りの販売にないこと、しかし同機の「ポテンシャル」は高く、それをお客様に伝えるために、いくつかの課題や今後の方針を述べた。そして、それが「仕事」と静かな口調ではあったが、明確に言い切った。当社が実施した「3DS満足度調査」によると、発売後の購入者の約70%が3DSに満足し友人や家族に薦めたいと答えている。立体視のみの機能の満足度は約67%だった。

概ね良好にちょっとプラスというところだろう。欲を言えば、初期購入者だけにあと10ポイントほど上積みが欲しかったところだ。ポテンシャルを数値ではかることは難しい。役に立つではなく、楽しさを伝えることはなおさらだ。しかし、さらりとではあったが、それを仕事と述べた岩田社長の、むしろ気負いの無さこそが強く印象に残った。